CALENDAR
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>
CATEGORIES
ARCHIVES
Amazon Bargains
MOBILE
qrcode
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

|-|-|-|2014/07/26 Sat.|
文は人なり、ミステリも人なり
宮部みゆき桜ほうさら』(PHP研究所,2013/03)

桜がご縁でめぐり遭った人々、次々に起きるミステリアスな事件。[帯] 小藩上総国搗根藩でひそかに渦巻く御家騒動、その渦中で収賄の疑いをかけられて自刃した小納戸役古橋宗左右衛門がクロとされた決め手は、宗左右衛門自身がまったく覚えはないがこれは自分の筆跡だと認めた完璧な偽造文書。果たしてそのような偽造ができる者がいるだろうか。そのような者がいるとしても搗根のような田舎ではすぐバレてしまうから、江戸という大都会に潜んでいるとしか考えられない。そこで、剣術はまったくだがそこそこ学問ができて少々ぼんやりで心やさしくて、そういうところが上昇志向の強い母と兄からは下にみられていた次男・古橋笙之介が、好きだった父のために立ち上がる…わけだが、その構図を考えたのは切れ者の江戸留守居役でありまして、その計らいで笙之介は深川の富勘長屋に移り住み写本で生計を立てながら、人情に触れ恋をして謎を解き格差社会を感じ殴られ刀を向けられ詰め寄られ文を書きそして成長する。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2013/05/21 Tue.|
緑のデミオに知性があってもいいじゃないか
伊坂幸太郎ガソリン生活』(朝日新聞出版,2013/03)

謎がひしめく会心の長編ミステリーにして幸福感の結晶たる、チャーミングな家族小説。[帯] 仙台に住む望月家は母親と大学生♂高校生♀小学生♂の4人家族。その自家用車である緑のデミオが語り手のミステリ。車は数メートルくらいの範囲であれば車同士で会話ができるし人間の言葉も理解できるので、たとえば登場人物がファミリーレストランのなかで会話している姿をみることはできるがその会話の内容を知ることはできない。そんな制限された情報をもとにして語られるのは、名家出身の元女優がダイアナ妃のようにパパラッチに追われて郊外のトンネル内で事故死した顛末、そして最低最悪最凶危険人物が元凶となって引きおこされる犯罪に加担させられそうになる望月家をめぐるサスペンス。
よくできたミステリであると同時に、車知性体を活写したSFとしても傑作。車たちは、半ドアには違和感を覚えるし、驚くと「開いたボンネットが塞がらない」と感じる由。車たちの間では「車輪の数に比例して、高度な知性を備えていくんだ」と考えられているという。二輪車に声をかけても「ё※★」といった聞き取り不能な返事が返ってくるだけだが、車輪の数が多い電車は尊敬の的、畏怖すべき存在であり、踏切前ではうっとりしてしまうらしい。自家用車が家族とともにいられる時間は限られているという省察にはほろりとさせられるし、「二度も叩くなんて、望月家の人間にもぶたれたことがないのに!」と言いだしたときには笑いました。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2013/05/17 Fri.|
洟もひっかけられない教授と、うすらでかい地方都市
村上春樹色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋,2013/04)

良いニュースと悪いニュースがある。[帯] 発売後7日で8刷100万部を突破したベストセラーをようやく読みました。読み始めればたのしくするすると最後まで行ってしまいました。
高校時代の友人たちから絶交されたこと今も引きずる技術職36歳♂自称中庸をめぐるミステリ。いくつかの謎は解決されるが、放置されたままの謎もある。例によって登場人物たちはいい暮らしをしていて、アレな行動をとる女性がでてきたときにはまたかよと呟いてしまいました。そして、なぜかわからないが主人公が高校卒業まで住んでいた名古屋がえらい言われようである。いわく
名古屋ももちろん大都会ではあるけれど、文化的な面をとりあげれば、東京に比べてうすらでかい地方都市という印象は否めない[p.24]
学校もずっと名古屋、職場も名古屋。なんだかコナン・ドイルの『失われた世界』みたい。ねえ、名古屋ってそんなに居心地の良いところなの?[p.145]
名大の教授というのはここではちょっとしたブランドだからな。でもそんなもの、東京に出たらまず通用しない。洟もひっかけられやしない[p.197]
いやいや。名古屋に対しては特別な感情はもっていないけれど、比較する相手が東京ばかりでなんだかなあ、東京こそそんなにいいか。大河ドラマ『平清盛』(2012)に文句をつけた兵庫県知事みたいに、名古屋市長がなにか言いそうだけれどとくには無かったのかしらん。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2013/05/03 Fri.|
電話が伝えたもの
横山秀夫『64』(文藝春秋,2012/10)

究極の警察小説完成! 〈昭和64年〉に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件をめぐり、刑事部と警務部が全面戦争に突入。狭間に落ちた広報官・三上義信は己の真を問われる。[帯] 平成14年。D県警広報官・三上義信にはたいへんな負荷がかかっていた。一人娘は父親似の容姿に絶望して家出し行方不明、元婦警である妻との関係もぎくしゃく、職場では刑事部出身の広報官ということで刑事部からも警務部からもぬえのようにみられ、中央−地方の構図のなかで東京から来たキャリアの本部長や警務部長からは虫けら扱い、記者クラブとの関係も匿名報道をめぐって険悪。そこへ突然決まった警察庁長官視察。その目的は、D県警史上最悪の未解決事件、昭和64年1月5日に起きた翔子ちゃん誘拐殺人事件を担当する捜査員の激励と内外へのアピールというけれど。
そして、最悪のタイミングで事件が起きる。さまざまな関係での軋轢や拮抗の底から浮かびあがる疑惑、葛藤、隠蔽、信義、真実。あの電話には驚愕し感嘆するしかない。だからだったのか。ミステリのロジックがあるからこそ紡ぐことのできるドラマがそこにある。これぞミステリ。三上義信とその家族それぞれの居場所についてのひびく物語でした。
このミステリーがすごい!2013年版国内編1位。
週刊文春ミステリーベスト10 2012年国内編1位。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2013/03/10 Sun.|
明日からは全部バケーション
伊坂幸太郎残り全部バケーション』(集英社,2012/12)

人生、まだ続いていくから[帯]
    収録作品
    • 第一章 残り全部バケーション
    • 第二章 タキオン作戦
    • 第三章 検問
    • 第四章 小さな兵隊
    • 第五章 飛べても8分

大ボス毒島さんの下請けとして脅したり騙したり攫ったり悪いことやっているもういい年齢のくせにいいかげんでせこくて自分のことしか考えていない小悪党溝口とその相棒を務める若いもん岡田をめぐる、時間線や登場人物があちこち散らかりながらゆるやかにつながる連作長篇。あの『チルドレン』(2004)で屁理屈を自在にのたまう陣内を連想させる、溝口の適当思考がすてき。岡田のつかみどころのない前向き発言「レバーをドライブに入れておけば、自然に前に進むから[p.51]」「嫌なことがあったら、バカンスのことを考えることにする[p.179]」もいいんだ。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2013/02/26 Tue.|
茶坊主の冒険
田中啓文茶坊主漫遊記』(集英社・文庫,2012/02)

死んだはずの石田三成が諸国を漫遊![帯]
関ヶ原の戦いから34年後の夏、地蔵と見紛う小柄な老僧と容貌魁偉な従者の一行が街道を行く。実はこれ、京都六条河原で斬首された筈の石田三成であった。行く先々で起こる奇ッ怪な事件をズバッと解決、高笑いを響かせながらの諸国漫遊だが、どうやら秘めたる目的があるらしい。一方、三成存命を知った将軍家光は、一行の始末を隠密・柳生十兵衛に命じるが――。ミステリー仕立ての痛快時代小説。[裏表紙]
    収録作品
    • 第一話 茶坊主の知恵
    • 第二話 茶坊主の童心
    • 第三話 茶坊主の醜聞
    • 第四話 茶坊主の不信
    • 第五話 茶坊主の秘密
      解説/日下三蔵

つまるところ、茶→ブラウン、坊主→神父の駄洒落がやりたかっただけではないかと睨んでしまうわけだが、茶坊主が各地で遭遇する事件を解決する連作ミステリとしての出来はよく、処刑されたはずの石田三成が生きていたという時代伝奇としての骨も太い。登場人物たちのその後にかかる追記には、そんなところにそんなルーツを繋げてみせるかとにんまりしてしまう。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2013/01/19 Sat.|
このミスのわらべ歌
このミステリーがすごい! 2013年版』(宝島社,2010/12)

メディアも注目! No.1ミステリーランキングブック[表紙] さて、2012年(2011/11〜2012/10)の国内編ベスト20位までのうち既読は以下のとおり。
恒例の年間ベストだが今年はクセがない。無理に変化球で勝負することもないだろうけれど、「2012週刊ミステリーベスト10」とベスト10作品が国内で8作、海外で7作被っているとは驚き。でも、幡大介を教えてくれた『このミス』には感謝。「私の隠し玉」では、近藤史恵の自転車小説『キアズマ』や法月綸太郎の移植短編集『ノックス・マシン』、それに山田正紀『弥勒戦争2』(弥勒戦争!の2!!)がたのしみ。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(3)|2013/01/13 Sun.|
バカミスへGO!! 江戸時代はメタミステリ
幡大介『猫間地獄のわらべ歌』(講談社・文庫,2012/07)

お江戸で、密室。館ものに、見立て殺人。驚天動地の王道推理!ミステリファンもご注目を!時代小説の暴れん坊・幡大介、講談社文庫に初登場。[帯] 文庫書下ろし時代小説はまったくチェックしていなかったのだけれど、『このミステリーがすごい! 2013年版』で2010年(2009/11〜2010/10)の国内編ベスト13位にランクインして「今年の超目玉商品である空前絶後のバカ時代ミステリー」と言われたら読まねばなるまい。で、巻末の解説(細谷正充)をチェックすると、1968年生、2008年デビュー、筒井康隆『富豪刑事』にインスパイアされたであろう「大富豪同心」シリーズも書いているというから期待に胸膨らむ。
まず、猫間藩江戸下屋敷奥御殿書物蔵で切腹したとしかみえない遺体が発見される。屋敷内で自害があったとはいえないから密室殺人として解明せよという無茶振り命令。これだけでも相当なのだが、他方、猫間藩の国許ではわらべ歌に見立てる首なし連続殺人事件が発生。さらに隅田川に浮かぶ屋形(館!)船で発生した殺人の謎も解明する破目に。詰めこむだけ詰めこんで、さらにさらに「密室……などと言う言葉は、この時代には、なかったのいではないかと推察いたしまするが[p.35]」「名付けて『ジャンル跨がりトリック』とはこのことだ![p.258]」「いきなり始まったメタ展開に焦る俺だが[p.371]」のメタメタ展開まで。謎はすべて解かれ、3つの事件に共通する背景が明らかになり、そして、最後の最後まで仕掛けを凝らしてくるやり過ぎ感がステキ。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(1)|2013/01/13 Sun.|
学生アリス'88
有栖川有栖『江神二郎の洞察』(東京創元社,2012/10)

アリス、英都大学推理小説研究会入部から一年の瑞々しいキャンパスライフ。大晦日のミステリ談義を描く書き下ろし「除夜を歩く」ほか全九編収録。[帯]
    収録作品
    • 瑠璃荘事件
    • ハードロック・ラバーズ・オンリー
    • やけた線路の上の死体
    • 桜川のオフィーリア
    • 四分間では短すぎる
    • 開かずの間の怪
    • 二十世紀的誘拐
    • 除夜を歩く
    • 蕩尽に関する一考察
      あとがき

英都大学に入学したアリスこと有栖川有栖が推理小説研究会に入部して過ごした1988年を描く連作短篇集。ミステリ作家を志望して法学部に入学したアリスの、長老と敬意をこめてよばれる江神二郎部長や、経済学部2年の凸凹コンビ、クイーンを信奉する望月周平とハードボイルドファンの織田光次郎とともに過ごした一年間が、ロジカルにさりげなくマニアックに瑞々しく描かれる。小品「ハードロック・ラバーズ・オンリー」の喫茶店で過ごす時間や「やけた線路の上の死体」のクラブ旅行、「四分間では短すぎる」「除夜を歩く」の江神部長の下宿での放談、なんでもないようなことが幸せだったと思う学生生活である。ラウンジに行けばそこにクラブの誰かがいて前置きもなしにミステリ談義が始まる。いや、話題はミステリに限ることなく二十世紀の時代性を語ったり元号をめぐる蘊蓄だったりなんでもあるのだ。しばしばミステリとはなにか、名探偵とは何者なのかを問うメタフィクショナルな展開になるのがまたうれしい。たとえば、ミステリの世界では誰もが疑わしいけれど現実の世界では「名探偵も他人を信じることができる[p.53]」ので容疑者を絞ることができるというアリスの発言は心を打つ。「殺人事件がミステリの中心的モチーフとなることには必然性がある[p.324]」と言う江神部長の「人間の最も切ない想いを推理が慰めるからや[同]」というミステリ論は美しく力強い。この年の夏に英都大学推理小説研究会が遭遇した殺人事件を描いた『月光ゲーム』も、今ならまた新たな感興がわいてきそうで再読したくなりました。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2013/01/07 Mon.|
その丘に眠るのは謎もしくは幻想
初野晴カマラとアマラの丘』(講談社,2012/09)

別れの時、動物[ペット]と言葉を交わせたら。[帯]
    収録作品
    • カマラとアマラの丘 ―ゴールデンレトリーバー―
    • ブクウスとツォノクワの丘 ―ビッグフット―
    • シレネッタの丘 ―天才インコ―
    • ヴァルキューリの丘 ―黒い未亡人とクマネズミ―
    • 星々の審判

幻想的な設定の連作ミステリ。
閉鎖された遊園地には、一人の青年が守る秘密の霊園があるという。彼が引き受けるのは、理由[わけ]ありペットの埋葬だけ―。[帯]
言葉を発することができないペットの悲哀と思いあがった人間の暗黒面を、声高になることなく技巧をこらし叙述していくその先に驚嘆が仕掛けられている。「カマラとアマラの丘」はミステリ、「ブクウスとツォノクワの丘」はSF、「シレネッタの丘」はファンタジーであり、「ヴァルキューリの丘」は三池崇史監督作品の原作にふさわしいのではないかしらん。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2012/12/28 Fri.|
<< | 2/16PAGES | >>