いとうせいこう『
想像ラジオ』(河出書房新社,2013/03)
こんばんは。
あるいはおはよう。
もしくはこんにちは。
想像ラジオです。
こういうある種アイマイな挨拶から始まるのも、この番組は昼夜を問わずあなたの想像力の中だけでオンエアされるからで[後略]
と始まる想像ラジオ。
東京の小さな音楽事務所でそこそこインディーズで売れたバンドや新人のマネージャーをしていたDJアーク(38)がなんか嫌になっちゃって年上の奥さん連れてなんとかなるだろうと郷里にUターンした翌日、どういうわけかというか理由はみんなわかるんだけど、町を見下ろす小山に生えている高い杉の木の頂点あたりに引っかかって仰向けになって繰り広げる想像ラジオ。東日本大震災以後の時代を生きる我々の耳に届く想像ラジオ。真摯ではあるけれど押しつけることはなく、せつないけれど憐憫に溺れることはなく、ベタではあるけれど適度な距離感があり、洗練されているけれどぬくもりがあり、諦観でも怒りでもなく、生者のためだけでなく死者のためだけでもなく、誰かが誰かのために送る誰かの心のなかにある想像ラジオ。そちらの方面に昏いのでまったくの適当発言だけど、これが
HIP HOP的ということなのだろう。いいじゃん。