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|-|-|-|2014/07/26 Sat.|
想像力を使うのぢゃ
いとうせいこう想像ラジオ』(河出書房新社,2013/03)

耳を澄ませば、彼らの声が聞こえるはず[帯]
こんばんは。
あるいはおはよう。
もしくはこんにちは。
想像ラジオです。
こういうある種アイマイな挨拶から始まるのも、この番組は昼夜を問わずあなたの想像力の中だけでオンエアされるからで[後略]
と始まる想像ラジオ。
東京の小さな音楽事務所でそこそこインディーズで売れたバンドや新人のマネージャーをしていたDJアーク(38)がなんか嫌になっちゃって年上の奥さん連れてなんとかなるだろうと郷里にUターンした翌日、どういうわけかというか理由はみんなわかるんだけど、町を見下ろす小山に生えている高い杉の木の頂点あたりに引っかかって仰向けになって繰り広げる想像ラジオ。東日本大震災以後の時代を生きる我々の耳に届く想像ラジオ。真摯ではあるけれど押しつけることはなく、せつないけれど憐憫に溺れることはなく、ベタではあるけれど適度な距離感があり、洗練されているけれどぬくもりがあり、諦観でも怒りでもなく、生者のためだけでなく死者のためだけでもなく、誰かが誰かのために送る誰かの心のなかにある想像ラジオ。そちらの方面に昏いのでまったくの適当発言だけど、これがHIP HOP的ということなのだろう。いいじゃん。
|読む―SF|comments(0)|trackbacks(0)|2013/05/23 Thu.|
日本SF作家クラブ、最初の10年
日本SF作家クラブ編『日本SF短編50 I』(早川書房・文庫,2013/03)

黎明と勃興の10年。[帯]
クラブが発足した一九六三年から二〇一二年までの五〇年を、クラブに所属する五〇人の作家、五〇の短編で振り返る。それぞれの年の特徴をとらえた作品を選び、しかも作家を重複させない[巻頭言/瀬名秀明,p.8]
という日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー全5巻、その最初の10年をとりあげた第1巻。北原尚彦日下三蔵星敬山岸真それに〈SFマガジン〉清水直樹編集長から成る編集員チームはどんな作品をあげてきたかお手並みを拝見しようではないか。
    収録作品
      巻頭言/瀬名秀明
    • 光瀬龍「墓碑銘二〇〇七年」(1963)
    • 豊田有恒「退魔戦記」(1964)
    • 石原藤夫「ハイウェイ惑星」(1965)
    • 石川喬司「魔法つかいの夏」(1966)
    • 星新一「鍵」(1967)
    • 福島正実「過去への電話」(1968)
    • 野田昌宏「OH! WHEN THE MARTIANS GO MARCHIN'IN」(1969)
    • 荒巻義雄「大いなる正午」(1970)
    • 半村良「およね平吉時穴道行」(1971)
    • 筒井康隆「おれに関する噂」(1972)
      巻末解説/星敬
え、小松左京が無いではないか。早川書房はまだそこまでするのかと思ったら、全収録作リストによれば「ゴルディアスの結び目」(1976)がII巻に収録される由。でも、星新一、小松左京、筒井康隆の第一世代の偉大な3人にはI巻に並んでいてほしいと願う。それはさておき、このリストが胸熱。100人のファンが100とおりのツッコミを入れるだろうという素敵ぶりなので引用しておきます。表現形式はワタクシ好みに変えています。
    I
    • 光瀬龍「墓碑銘二〇〇七年」(1963)
    • 豊田有恒「退魔戦記」(1964)
    • 石原藤夫「ハイウェイ惑星」(1965)
    • 石川喬司「魔法つかいの夏」(1966)
    • 星新一「鍵」(1967)
    • 福島正実「過去への電話」(1968)
    • 野田昌宏「OH! WHEN THE MARTIANS GO MARCHIN'IN」(1969)
    • 荒巻義雄「大いなる正午」(1970)
    • 半村良「およね平吉時穴道行」(1971)
    • 筒井康隆「おれに関する噂」(1972)
    II
    • 山野浩一「メシメリ街道」(1973)
    • 眉村卓「名残の雪」(1974)
    • 矢野徹「折紙宇宙船の伝説」(1975)
    • 小松左京「ゴルディアスの結び目」(1976)
    • 横田順彌「大正三年十一月十六日」(1977)
    • 夢枕獏「猫ひきのオルオラネ」(1978)
    • 神林長平「妖精が舞う」(1979)
    • 梶尾真治「百光年ハネムーン」(1980)
    • 新井素子「ネプチューン」(1981)
    • 大原まり子「アルザスの天使猫」(1982)
    III
    • 山田正紀「交差点の恋人」(1983)
    • 田中芳樹「戦場の夜想曲(ノクターン)」(1984)
    • 栗本薫「滅びの風」(1985)
    • 川又千秋「火星甲殻団」(1986)
    • 中井紀夫「見果てぬ風」(1987)
    • 野阿梓「黄昏郷」(1988)
    • 椎名誠「引綱軽便鉄道」(1989)
    • 草上仁「ゆっくりと南へ」(1990)
    • 谷甲州「星殺し」(1991)
    • 森岡浩之「夢の樹が接げたなら」(1992)
    IV
    • 大槻ケンヂ「くるぐる使い」(1993)
    • 宮部みゆき「朽ちてゆくまで」(1994)
    • 篠田節子「操作手(マニピュレーター)」(1995)
    • 藤田雅矢「計算の季節」(1996)
    • 菅浩江「永遠の森」(1997)
    • 小林泰三「海を見る人」(1998)
    • 牧野修「螺旋文書」(1999)
    • 田中啓文「嘔吐した宇宙飛行士」(2000)
    • 藤崎慎吾「星に願いを」(2001)
    • 北野勇作「かめさん」(2002)
    V
    • 林譲治「重力の使命」(2003)
    • 冲方丁「日本改暦事情」(2004)
    • 高野史緒「ヴェネツィアの恋人」(2005)
    • 上田早夕里「魚舟(うおぶね)・獣舟(けものぶね)」(2006)
    • 伊藤計劃「The Indifference Engine」(2007)
    • 小川一水「白鳥熱の朝(あした)に」(2008)
    • 飛浩隆「自生の夢」(2009)
    • 山本弘「オルダーセンの世界」(2010)
    • 宮内悠介「人間の王」(2011)
    • 瀬名秀明「きみに読む物語」(2012)
あれ、なんでこのひとがいないのという疑問がすぐ湧いてきます。平井和正や山尾悠子、鈴木いずみさらには野尻抱介も円城塔もSF作家クラブに所属していないのだから未収録。広瀬正も遺族の掲載許諾が得られなかったということで仕方ない。手塚治虫も萩尾望都も大友克洋も漫画は採らないらしい。この3人も受賞している日本SF大賞受賞をもらっているなかでは、荒俣宏や貴志祐介は長篇型だから収録する適当な作品がないということなのだろう。しかし、日本SF大賞/星雲賞ダブルクラウンの堀晃とかんべむさしがいないのは納得しがたい。日下三蔵の「早川書房に対する遠慮から外したという事実は一切ありません」というコメントによれば、
具体的に言いますと、堀さんは77年と78年の候補に残っていました。77年は堀作品は二つの短篇に票が割れて三票を集めた横田順彌さんの作品に決まりました。78年は二票から三票の作品が多い激戦でしたが評価の高かった堀さんの「梅田地下オデッセイ」はアンソロジーに収録するには長すぎるという理由で対象から外れ、二転三転の末に夢枕獏さんの作品に決まりました。
というけれど。1977年の堀作品といえば、「太陽風交点」(SFM1977/03)と「バビロニア・ウェーブ」(SFM1977/10)か。対抗の横田順彌については、明治ものであれば「大正三年十一月十六日」でなく〈鵜沢龍岳シリーズ〉から採ってほしいし、いや、やはりハチャハチャの祖なのだから「宇宙ゴミ大戦争」(SFM1974/10)もしくは奇しくも堀晃そのひとが「ハチャハチャSFの最高傑作と誰もが認める」と評した『脱線!たいむましん奇譚』(1976-1978発表作品を収録)から選んでいただきたい。ほかの年でも「暗黒星団」(SFM1976/02)、「悪魔のホットライン」(SFM1978/2)、「アンドロメダ占星術」(SFM1979/05)など傑作が目白押しではないか。わからん。
編集員チームが語りあう「オールスターアンソロジー「日本SF短編50」を語る」によれば、(1)日下三蔵編『日本SF全集』全6巻(出版芸術社,2009-)と被らない、(2)短篇集表題作はなるべく採らない、(3)〈NOVA〉から採りすぎない、(4)新井素子「ネプチューン」180枚は収録したけれど長いという理由で採らなかったものがあるなどの御説明がありました。そうですか。
最後に本巻について。すべて再読でした。昔のオレはSFならなんでもマメに読んでいたんだねえ。光瀬龍を〈宇宙年代記〉シリーズから採るのは納得だが、できればユイ・アフテングリが登場するものにしてほしかった。石原藤夫「ハイウェイ惑星」に文句はないけれど、この機会にナンセンスなハードSF〈オロモルフ号〉シリーズの評価を。石川喬司は〈夢書房〉シリーズを強く希望。福島正実は編集者・翻訳者として評価するけれど。半村良「赤い酒場を訪れたまえ」(1970)や野田昌宏「レモン月夜の宇宙船」(1968)は『日本SF全集』に先行されていました。筒井康隆「おれに関する噂」は古びることのないマスターピース。荒巻義雄「大いなる正午」はこの時代ならではの傑作。
|読む―SF|comments(2)|trackbacks(1)|2013/04/15 Mon.|
本は勝手に増える
小田雅久仁本にだって雄と雌があります』(新潮社,2012/10)

血脈と蔵書と愛にあふれた世界的ご近所ファンタジー[帯] 本にだって雄と雌があるのだそうで、現にサルトル『嘔吐・壁』とエンデ『はてしない物語』の間に『はてしなく壁に嘔吐する物語』が生まれたりするのだが、その生まれてきた幻書だか混書だかを巡ってぐるぐるしてみせてハイ本を愛するって素晴らしいですねサイナラサイナラサイナラと終わるような話ならあの岸本佐知子が「どうかしてます。いい意味で。[帯]」と絶賛するわけもなく、二人称の語りは脱線しまくって歴史律は歪みヒトラーは暗殺を逃れボルネオ死の行軍があり旧制一高はバンカラでポロピレで奇跡の生存者があって象が飛び図書館が聳え流言空言預言戯言罵詈雑言雨霰ぐるりとまわって話の辻褄があったのかあわなかったのかどちらかというとそういうことは気にしてもしかたないとあっさり白旗をあげるしかないあっけらかんと愛と奇想を謳いあげる傑物と凡人を輩出した一族の書物にまみれた怒濤の物語。やっぱりな!
そして、そのすばらしい物語を支える滔々たる饒舌がまた堪らない。比喩ひとつとっても「歯に衣着せた上に婆シャツも着せてジャージも着せてちゃんちゃんこも着せて十二単も着せて宇宙服も着せてさらにガンダムのコックピットに押し込んだぐらい[p.59]」とかもう大好き。しあわせな傑作。
|読む―SF|comments(2)|trackbacks(0)|2013/03/28 Thu.|
ファーストコンタクトはじめました
山本弘UFOはもう来ない』(PHP研究所,2012/12)

地球は監視されている[帯]
僕の大好きなUFOネタを詰めこんだ話で、おそらく「日本でいちばん濃いUFO小説」だろうと思います。
「本当に異星人のUFOが地球に来ていたら」という設定ですが、もちろん、ちゃんとしたファースト・コンタクトSFにもなってます。UFOに関するうんちくを山ほど語る一方で、従来のSF映画やUFO本に出てくる「異星人」のイメージを覆す設定をいろいろ盛りこんでいます。[山本弘のSF秘密基地BLOG,2012年12月06日]
舞台は現代、不慮の事故で異星人が着陸したのは京都山科。最初に接触したのは元気な小学5年生男子3人組。そして、喰うためにインチキUFO番組を量産してきたがテレビマンの志もまだどこかに持っていそうなTVディレクターとそのスタッフ、大好きな祖父の遺志を継いだ美人で威勢のいい正統派UFO研究家、巨大カルト団体を率いるシニカルな詐欺師が入り乱れてのてんやわんや。あまたのUFOネタに業界の裏話や精緻な設定のあれやこれやがどっさり盛りこまれているがネタの出し入れが巧みでギリギリうるさくなくテンポよく展開。「そして"銀河の歴史"が解き明かされる[帯]」のでした。
|読む―SF|comments(0)|trackbacks(0)|2013/02/16 Sat.|
私と驚いて
恩田陸『私と踊って』(新潮社,2012/12))

たとえ世界が終わってもずっと私を見ていてくれる?/冴えわたる恩田ワールド、きらめく十九の万華鏡。[帯]
    収録作品
    • 心変わり
    • 骰子の七の目
    • 忠告
    • 弁明
    • 少女界曼荼羅
    • 協力
    • 思い違い
    • 台北小夜曲
    • 理由
    • 火星の運河
    • 死者の季節
    • 劇場を出て
    • 二人でお茶を
    • 聖なる氾濫
    • 海の泡より生まれて
    • 茜さす
    • 私と踊って
      あとがき
    • 東京の日記
    • 交信

『図書室の海』(2002)、『朝日のようにさわやかに』(2007)に続くノンシリーズの第3短篇集。
恩田陸が広げてみせる異容な世界にいつも唖然とさせられる。ダイナミックに動く(ほんとうに動く)「少女界曼荼羅」○の世界のたまらないスケール感と短篇ならではの唐突なクライマックス。善良な市民が会議をひらくというだけの「骰子の七の目」や、ブローディガンの孫が書いたという設定の「東京の日記」は、どこかで半村良『軍靴の響き』と通底した、ありそうな危うい国が舞台。一方にはツイストのきいたサスペンスもあり。「心変わり」で職場から消えた同僚の行方を追ううちにヒヤリとする思い。「思い違い」のコーヒーショップできこえてきた奇妙な会話の意味するところ。はさまれる掌編がまたどれも奇妙でいいのだ。犬SF「忠告」○と猫SF「協力」はそれぞれ愛すべき掌篇だがペアにして鑑賞するとなお良し。はい、どちらかと言えば犬派です。児童文学雑誌〈飛ぶ教室〉に発表されたおとうさんとおかあさんの結婚の「理由」にほのぼの。写真を読みとる能力者についてのエキゾチック連作掌編「聖なる氾濫」「海の泡より生まれて」「茜さす」。意外なところに隠された切ない「交信」○。そのほかに、舞踏に題材をとった「私と踊って」などの音楽や舞台を主題にしたものや、懐かしく切ない「死者の季節」までバラエティに富んでいながら不思議な芯がある。
|読む―SF|comments(0)|trackbacks(0)|2013/02/11 Mon.|
凍ったヴォルガ川より冷静になれ
月村了衛機龍警察 暗黒市場』(早川書房,2012/09)

あらゆる小説ジャンルの昂奮を備えた超弩級の傑作。このシリーズは、今後いかなる高みにまで達するのか。ミステリ評論家千街晶之[帯] 二足歩行型有人搭乗兵器の闊歩する至近未来小説〈機龍警察〉シリーズ第3作。ゆるい国ニッポンでまかりとおる武器密売ビジネスに進出するロシアン・マフィア、迎え撃つ警視庁はかわいい子分…じゃなかった内偵中の部下をなぶり殺しにされたマル暴と、最新鋭兵装ならばお任せの特捜部SIPDの合同チーム。さて、特捜部の元傭兵・元モスクワ民警のユーリ・オズノフ警部は警視庁との契約を解除され、いまはロシアン・マフィアの大立者となった幼馴染のゾロトフとともに武器密売に手を染めることに。中盤で描かれるユーリとゾロノフの過去がまた沁みる。モスクワの小学校での警官の息子と落ちぶれたマフィアの息子の交流はときおり影が差すことはあるものの無邪気なもので、それはもう懐かしの岩波少年文庫『ヴィーチャと学校友だち』とか思い出したりするわけですが、このあとにどんなにかつらい展開がと思うともう胸が苦しくて。父親と同じモスクワ民警の一員となったユーリは、よき先輩とともに誇り高き「最も痩せた犬達」として警察官として成長する。ダムチェンコ先輩の妹との婚約も決まった矢先、事件にまきこまれ裏切られ警官殺しの汚名を着せられたユーリは裏社会へと転落していくのでした。後半、冬の夜の追跡劇の苛烈なアクションの連続のその先にあったものは、変貌する世界のなかで警察官の魂を忘れない人々の真実。
第33回日本SF大賞受賞作。
このミステリーがすごい!2013年版国内編3位。
週刊文春ミステリーベスト10 2012年国内編9位。
|読む―SF|comments(0)|trackbacks(0)|2013/02/09 Sat.|
SFの話をした夜
藤井太洋『Gene Mapper』 新宿で忘年会。SFの話がたくさんできました。『屍者の帝国』の男気に感動した。でも、これで伊藤計劃の伝説が完結してしまっていいのか。ボリス・ストルガツキイを悼んでストルガツキイ兄弟の諸作をふりかえる。今まさに『収容所惑星』を原作とする映画『プリズナー・オブ・パワー』がユーロスペースで公開中なれどレイトショーでは観にいきづらいと嘆く。バチガルピは『ねじまき少女』はそれほどでもないが短篇集『第六ポンプ』は読め。もちろん「大卒ポンプ」もすばらしい。あと〈新☆ハヤカワ・SF・シリーズ〉は『サイバラバード・デイズ』を読め。やばい、そもそも新銀背をまだ1冊も読みとおしきれないでいる。まったく知らなかった藤井太洋Gene Mapper』を推される。野尻抱介がいい。小川一水がいい。山田正紀がいい。そうそう『弥勒戦争2』が書かれるらしいぞよ。などなど。ああ、たのしかった。
|読む―SF|comments(0)|trackbacks(0)|2012/12/15 Sat.|
情報が震える
神林長平『ぼくらは都市を愛していた』(朝日新聞出版,2012/07)

神林長平はまっすぐ進む。歪んでいるのはあなたの方だ。/円城塔[帯]
デジタルデータのみを破壊する〈情報震〉が地球上で頻発している。原因はおろか震源地すら特定できない。あらゆる情報が崩壊し、機能を失った大都市からは人の影が消えた。偵察のためトウキョウに進駐した日本情報軍機動観測隊は、想定外の「敵」と出会う……終末か創世か、3.11を経てはじめて書き得た、渾身の長編登場![帯]
東日本大震災を経験したかどうかは送り手側の事情というか、きっかけではあっても必然ではなく、受け手はこの美しく儚い都市とコミュニケーションと断絶の物語に静かに接するだけのことだ。
2020年のトウキョウを舞台にした双子の姉と弟の物語。弟はうだつのあがらない公安警察官、上部機関によって一種のテレパシー能力を体内に植え付けられる。過去の援助交際について回想しながら不可解な殺人事件を追う。姉は日本情報軍機動観測隊小隊を率いる中尉。情報震に襲われた無人のトウキョウをさまよう。都市とは何か。都市は何を記憶しているのか。都市は何を認識しているのか。
都市とは、〈人間が観念のみで生きることを可能にする装置〉だ[p.217]
そういうことだ。そういう世界が、神林長平ならではの自問する文体で描かれていた。
|読む―SF|comments(0)|trackbacks(0)|2012/10/26 Fri.|
屍者の使者が支社で試射した
伊藤計劃/円城塔屍者の帝国』(河出書房新社,2012/08)

意識とは何か? 魂とは何か? 若き英国諜報員ワトソンの冒険が始まる―
早逝の天才・伊藤計劃の未完の絶筆が、盟友・円城塔に引き継がれて遂に完成[帯]
このいきさつだけで、すでに伝説です。しかも傑作。
伊藤計劃が遺したプロローグ、いきなりロンドン大学医学部で学ぶジョン・H・ワトソン(!)が登場。フランケンシュタイン(!)が開発した死体蘇生技術について、ヴァン・ヘルシング教授(!)から講義を受ける。ってなんだよそれはステキすぎるじゃないか。キリがないのであとは(!)を略します。というわけでこの19世紀末の世界は、復活した屍者を労働力として活用することで繁栄しているのであります。そのほかにもディファレンス・エンジンとかあとからいろいろ出てきてそれも感涙ものなのだけれど、それはさておいて、ヴァン・ヘルシングにスカウトされたワトソンが連れて行かれたのがユニヴァーサル貿易。もちろん、これは世を忍ぶ諜報機関の仮の姿のわけで、そこにはMがいて、なんとMの弟は諮問探偵というのだからもうどれだけ好き勝手に妄想しているのか。このプロローグの時点で、ヴィクトリア朝の007で吸血鬼とフランケンシュタインとシャーロック・ホームズが絡むんだと悶絶。
続く本編、円城塔が芥川賞受賞をはさむ3年余の歳月をかけて書き継いだ本書の95%がまた素晴らしい。ワトソンは、軍医として屍者フライデーを従僕にインドを経てアフガニスタンへと赴く。って史実(?)どおり(!)じゃないか。感激のあまり、また(!)を使ってしまったよ。その目的地は、アレクセイ・カラマーゾフ(!!)がアフガニスタン山中に築いた「屍者の帝国」。というのがまだ第一部。続く第二部では日本、第三部ではアメリカ、ふたたびロンドンへと物語はめぐる痛快娯楽歴史改変メタSF。派手なアクションとしみじみとした諧謔とただならぬ思索。読んだひとはみんな昂揚してなにか言いたくなるそういう傑作。
ネットでみた昂揚の例をすこしですが挙げておきます。これが愛だ。
|読む―SF|comments(0)|trackbacks(2)|2012/10/20 Sat.|
あなたも誰かにライトノベルをインプットされている
筒井康隆ビアンカ・オーバースタディ』(星海社,2012/08)

筒井康隆、ライトノベル始めました。[帯] ヒロインと放課後の理科室と未来人がでてくる設定が共通する自作『時をかける少女』(1967、なんと45年前!)のパロディ。あるいは、大御所がライトノベルを書いたらというメタフィクション。生命科学や草食系男子、資本主義経済に原発も揶揄する書きぶりに、タコ型火星人に通じる懐かしさを感じたり。
|読む―SF|comments(0)|trackbacks(0)|2012/09/29 Sat.|
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