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|-|-|-|2014/07/26 Sat.|
夢のない家を出て愛のない人にあう
辻村深月鍵のない夢を見る』(文藝春秋,2012/05)

彼氏が欲しい、結婚したい、ママになりたい、普通に幸せになりたい、そんな願いが転落を呼び込む/望むことは、罪ですか?[帯]
    収録作品
    • 仁志野町の泥棒
    • 石蕗南地区の放火
    • 美弥谷団地の逃亡者
    • 芹葉大学の夢と殺人
    • 君本家の誘拐
メフィスト賞からデビューした辻村深月(の「辻」は、綾辻行人の「辻」に因んでいるんですって)の第147回直木賞(2012上半期)受賞作。地方都市に住む普通のひとの犯罪を描いた5篇を収録。登場人物は男も女も、周囲をうっすらと見下し、とくに考えもなく依存し、自分は幸せになりたいというごくあたりまえのはずの思いがいびつに肥大している。「石蕗南地区の放火」や「芹葉大学の夢と殺人」で描かれるちょっと/かなり勘違いした男たちのふるまいはおかしいのに笑えません。その男たちをバカにする女たちがまた勘違いの罠に囚われているという仮想的有能感の連鎖がつらい。小説に人物描写を求める読者ではないのでよくわからないのですが、「今度の小説で辻村さんは見事に大人の人生を描き切っている[林真理子,直木賞選評]」のだろう。
|読む―ミステリ|comments(1)|trackbacks(0)|2012/11/30 Fri.|
出版喜劇
東野圭吾『歪笑小説』(集英社・文庫,2012/01)

熱海圭介『銃弾と薔薇に聞いてくれ』
    収録作品
    • 伝説の男
    • 夢の映像化
    • 序ノ口
    • 罪な女
    • 最終候補
    • 小説誌
    • 天敵
    • 文学賞設立
    • ミステリ特集
    • 引退発表
    • 戦略
    • 職業、小説家
    • 巻末広告
出版業界を舞台にした喜劇と狂気、そこに悲哀がうっすら滲まなくもない、おおいなる爆笑を誘う楽屋オチ連作。その奥底には小説への愛情と編集者への信義が込められているような気もしないではなくもなかずば撃たれまい。
「伝説の男」「天敵」「文学賞設立」「戦略」原稿獲得、売上アップのためなら何でもする伝説の編集長・獅子取の肖像。彼こそプロフェッショナルである。だからおかしい。「夢の映像化」「ミステリ特集」「戦略」くさいハードボイルドを書かせたら並ぶ者のない新人作家・熱海圭介のオドオドとした浮かれっぷりがステキ。対する編集者・小堺がいつも冷静でこれがまたおかしい。「序ノ口」「天敵」「職業、小説家」本格不条理ミステリを得意とする新人作家・唐傘ザンゲが文壇ゴルフで揉まれ、編集者に叱咤され、結婚するまでを描く。そのデビュー作『虚無僧探偵ゾフィー』は、超大物作家に「ゾフィーは虚無僧ではないが、虚無僧はゾフィーだというオチには、度肝を抜かれた。完全に騙された」と言わせたほどの出来だが、これは読んでみたい。「小説誌」月刊小説誌編集者に突きつけられる中学生の疑問「どれぐらい売れて、いくらぐらい儲かっているんですか。そもそも黒字なんですか」が鋭すぎる逸品。これを掲載した《小説すばる》はどれぐらい売れているのだろう。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2012/08/18 Sat.|
物語的な真実のために
城平京虚構推理 鋼人七瀬』(講談社・ノベルス,2011/05)

『僕は友達が少ない』の平坂読氏も大絶賛![帯] いかにもライトノベルな体裁で、妖怪に魅入られた岩永琴子(一眼一足)と桜川九郎(アレの肉を食べた)が、鉄骨を片手にミニスカートのドレスで街を徘徊する亡霊になったアイドル鋼人七瀬の謎と対決する。対決は一気にエスカレートし、ただ謎を推理するというレベルではおさまらず、こちらの世界とあちらの世界が論理と論理で対決する超論理的な展開に息を呑む。というか、ぶっちゃっけ
そう、これは推理ではない。とんちだ。[p.168]
ということになるんだけど。ただの真実ではなく、あくまでも物語的な真実を追求する、怒涛のとんち攻勢に感嘆。
第12回本格ミステリ大賞(2012)受賞作。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(1)|2012/07/20 Fri.|
青春に文化祭は欠かせない
初野晴『千年ジュリエット』(角川書店,2012/03)

こんどの舞台は文化祭!/アメリカ民謡クラブ、演劇部、そして吹奏楽部……おかしなキャラクターたちがひき起こす難問題とは?[帯]
    収録作品
    • イントロダクション
    • エデンの谷
    • 失踪ヘビーロッカー
    • 決闘戯曲
    • 千年ジュリエット
大好評青春ミステリ"ハルチカ"シリーズ第4弾[帯]
装丁の意趣を変えたのは第3作『空想オルガン』限りとして、ふたたび制服の女子高生がカバーに復活したのは慶賀なり。
さて、冒頭から「ありがとう日野原さま。文化祭開催はあなたさまのおかげです。清水南高生徒一同」と来ました。ハシカが流行して市内の中学高校のイベントが軒並み中止になるなか、清水南高文学祭は日野原生徒会長の力で開催にこぎつけた由。ということで今回の舞台は高2秋の文化祭。事件が次々起きます。「エデンの谷」吹奏楽部の文化祭発表に向けた全体練習にあらわれた謎のスナフキン女とあこがれの草壁先生の関係はいかに。今後のシリーズの展開に新たな布石。「失踪ヘビーロッカー」タクシーで文化祭に向かったはずのアメリカ民謡クラブ(ハードロックとヘヴィメタルが専門)部長の奇妙な行動の理由は何か。後輩の健気さが泣かせる。「決闘戯曲」未完の脚本のオチを求めて三千里。「千年ジュリエット」入院している女性5人が始めた恋愛相談サイト。文化祭にやってきた私。関係あるようなないようなふたつのエピソードを、巧緻な叙述でつないでみせる。そう来ましたか。そして文化祭は大団円。この巻は吹奏楽部の天敵だった日野原生徒会長が大活躍でした。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2012/07/14 Sat.|
仮面がいっぱい
綾辻行人奇面館の殺人』(講談社・ノベルズ,2012/01) 懐かしくも新しい―これぞ綾辻・館ミステリの神髄!![帯] 奇才の建築家・中村青司が日本各地に建てたでかくてからくりのあるお屋敷にひとが集められ殺人があるあの〈館〉シリーズ全10作予定の9作目。あの衝撃の『十角館の殺人』(1987)から四半世紀が経ちましたが、小説内時間はまだ1993年で携帯電話もまだほとんど普及していません。
さて、今回もいささか人格に難はあるものの財産はがっちり相続している館の主人が登場します。主人は〈もう一人の自分〉探しに熱中しており、1泊2日謝礼200万円で6人の候補を奇面館に集めます。ただし表情恐怖症なので、本人も客も執事も秘書もメイドも仮面をつけることを求めます。そして、館は季節外れの雪に閉ざされこれはもうなにか起こらないわけがないと思っていたところに、主人の部屋で凄惨な死体が発見される。客は寝ている間に仮面に鍵がかけられていて、これでは誰が誰だかわからない。たまたま客のなかにまぎれこんでいた名探偵・鹿谷門美が仮面をかぶったまま息苦しくも推理をはじめる。強引な設定のなかで、論理を通し、幻想の余韻を引く思わせぶりたっぷりの文体は健在で懐かしく楽しみました。
ちなみに〈館〉シリーズのなかでも好きなのは、やはり最初の『十角館』のあの記述、そして『時計館』のあのずれなのです。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(1)|2012/07/01 Sun.|
今そこにある香車
橋本長道サラの柔らかな香車』(集英社,2012/02)

勝負の世界を生きる3人の少女を巡り、「才能とは何か?」と厳しく問う、青春長篇![帯] 将棋もしくは広義のボードゲームを描いた小説というと、最近では貴志祐介『ダークゾーン』や宮内悠介『盤上の夜』といった秀作SFがあり、古くは夭折した村山聖をモデルにした大崎善生『聖の青春』があるが、いずれも若き挑戦者たちの物語という共通点をもつ。それは、年齢制限がある奨励会という苛酷なシステムに拠るところも大きいのだろう。その奨励会にかつて在籍しプロ棋士を目指した経験のある著者による第24回小説すばる新人賞受賞作。
タイトルに香車とあるので将棋を題材としているのだろうと想像がつく。ところが、表紙は金髪碧眼の少女のバストショット。むむむと戸惑ったその時点で、すでにこの魅力的な成長の物語に絡め取られているのでした。舞台は女流名人戦第五局。若き女流名人・萩原塔子に挑戦するのは、さらに一回り若い金髪碧眼日系ブラジル人の護池・レメディオス・サラ女流2級(あ、表紙のひとだ)。今まさに進行する棋戦と、語り手である元奨励会1級のライターによるサラたち女流棋士の半生を追うルポが交互に描かれていく。マジックリアリズムな香りがする天才、かどうかはともかく常人の理解を超えた世界認識能力をもつサラ。限られた時間をおのれが目指す将棋のために有効に使おうと腐心する塔子。塔子に憧れ、次代の棋界を担うスターとして期待されていながらサラに敗退して将棋から離れた女子高生・北森七海。3人の少女、そして彼女たちにかかわる男たちが「未来の将棋[帯]」を目指す先には何があるのか。熱いビジョンを示して力強い物語である。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2012/06/23 Sat.|
謎を解くだけではすまされない
小川一水トネイロ会の非殺人事件』(光文社,2012/04)

あの手この手で仕掛けられた、三つの魅力的な謎[帯]
    収録作品
    • 星風よ、淀みに吹け
    • くばり神の紀
    • トネイロ会の非殺人事件
ひねりのきいたミステリ3篇。趣向はさまざまだが、いずれも謎を解いたその先にふくらみがある豊かな物語。「星風よ、淀みに吹け」○本格密室。現場は日本宇宙機構の閉鎖環境長期滞在実験施設という究極の密室。謎はあざやかに逆転の発想で解かれる。ラスト、被害者同僚たちの迸る想いが眩しい。「くばり神の紀」◎歴史ある伊勢山町で、有力者の臨終の際にあらわれるふしぎな現象を解明する怪奇ミステリ。そしてユートピアが兆す展開に心躍る。「トネイロ会の非殺人事件」10人で一緒に殺すはずだったのに、1人だけ参加しなかった者がいる。その非殺人者を探すユニークなミステリ、だけではないのだから畏れ入りました。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2012/06/21 Thu.|
仙台発伊坂幸太郎
伊坂幸太郎『仙台ぐらし』(荒蝦夷,2012/02)

「仙台学追う評連載エッセイ11篇/2011年エッセイ4篇/書き下ろし短編「ブックモービル」[帯] 東日本大震災以前の連載エッセイに、震災以後の寄稿、それから書き下ろし短篇「ブックモービル」を併録した、ローカルでマイナーでたコンパクトな一冊。震災は仙台に住む伊坂幸太郎の生活にもちろん大きな影響を与えたわけだが、その文体は変わらずクールでしなやか。震災後の「仙台のタウン誌へのコメント」の結びに、「あまり無理せず、遠回りをしてもいいから、史上最大の復興を進んでいくんだ[p.159]」とあるのに意気を感じる。書き下ろし短篇「ブックモービル」は、震災後の石巻で移動図書館を運営するボランティア2人のそれぞれの動機を描いてニコニコしみじみ。なんやかやの脅威とともに生きていく今ここにある物語。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(1)|2012/06/11 Mon.|
こんなもんや
田中啓文こなもん屋馬子』(実業之日本社,2011/10)

謎のレシピでお悩み解決。[帯]
    収録作品
    • 豚玉のジョー
    • たこ焼きのジュン
    • おうどんのリュウ
    • 焼きそばのケン
    • マルゲリータのジンペイ
    • 豚まんのコーザブロー
    • ラーメンの喝瑛
こなもん連作ミステリ。毎回、舞台となる店は毎回違うのだが、大阪のどこかディープな界隈にあって汚なくてこれぞ大阪のおばはん蘇我家馬子が作るこなもん(ただしモンジャと広島風お好みは死んでも作らん。死にたかったら注文してみ[p.13])は絶品という設定は共通、なんらかの謎があって馬子の乱暴な知恵がはたらいて、最後は各篇の語り手である客ジョーとかジュンとかまああれですけどその正体も明らかになってオチがつく。このお決まりの展開のなかでのバリエーションが楽しい。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2012/03/16 Fri.|
辞書編集という冒険
三浦しをん舟を編む』(光文社,2011/09)

【辞書編集者】普通の人間。食べて、泣いて、笑って、恋をして。ただ少し人より言葉の海で遊ぶのがすき。[帯] 辞書編集という天職に出会いそのうえ奇跡としか思えぬすばらしい伴侶を得た髪ボサボサのいかにもな編集者が、十数年の歳月をかけて一冊の辞典を作りあげるまでの物語は凛々しく力があるのだが、それだけではない厚みがこの本にはある。たとえば、調子はいいしプライドもあるけれど入れ込むなにかを見つけらいでいるチャラ男も編集に関わるのだが、チャラ男なりに力を尽くす姿がいいのである。そのほかにもさまざまなひとが関わってのハラハラドキドキの連続。辞書を編むお仕事小説であると同時に、チームで困難に挑んでいくすぐれた冒険小説でありました。
2012年本屋大賞ノミネート作。
|読む―ミステリ|comments(0)|trackbacks(0)|2012/02/17 Fri.|
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